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資産除去債務

資産除去債務(ARO)とは、設備の耐用年数終了時に解体・撤去を行う法的義務のことです。日本の会計基準(企業会計基準第18号)では、この費用を廃止時まで認識を待つのではなく、設備が稼働を開始した時点で将来の除去費用の割引現在価値を負債として認識し、同額を資産として計上したうえで、設備のライフサイクルを通じて両方を取り崩していきます。

Tensor Cloudは、AROが有効なCAPEX支払いについてAROスケジュール全体を自動生成し、月次で財務ベースラインに反映します。

info

AROはプロジェクト単位ではなく、CAPEX支払い単位で設定します。1つのプロジェクト内で、AROを適用するCAPEX項目と適用しない項目を混在させることができます。ARO割引率は、各CAPEX支払いの処分タブで設定します。

AROの計算方法

認識時点

AROは、**関連する太陽光システムまたは蓄電池の商業運転開始日(COD)**の当月に認識されます。負債と資産計上されるARO相当資産の両方が、認識月に全額計上されます。

caution

AROの認識時点は常に太陽光システムまたは蓄電池のCODに従います。減価償却開始日の設定を上書きした場合でもその影響を受けず、またCAPEX支払日とも連動しません。建設期間中に設備の支払いを行っても、設備が稼働を開始するまでAROは認識されません。

当初負債

当初負債は、処分金額をスケジュール終了時点から認識月まで割り引いた金額です:

L0=C(1+m)Nここでm=(1+r)1121L_0 = \frac{C}{(1 + m)^N} \qquad \text{ここで} \qquad m = (1 + r)^{\frac{1}{12}} - 1
  • CC: CAPEX支払いに設定された処分金額
  • rr: 年率のARO割引率
  • mm: これに相当する月次利率
  • NN: 認識月から除去日の前日を含む月までの月数(両端を含む)

NNは日数ではなく月数の整数で計算されます。これにより割引計算が月次の利息費用スケジュールと整合し、通年の会計年度における利息費用が一定の率で増加し、最終年度に不自然な増加が生じることを防ぎます。

利息費用

負債は毎月、月次利率の分だけ増加します:

利息費用t=Lt1×m\text{利息費用}_t = L_{t-1} \times m

最初の利息費用は認識月に計上されます。利息費用は**資産除去債務利息費用(5020)**に計上され、ARO相当資産の減価償却が終了した後も含め、債務の存続期間全体にわたって継続します。これは意図的な処理です。設備の耐用年数が終了しても債務自体は決済されないため、除去時まで利息費用は発生し続けます。

最終の利息費用は率による計算ではなく残額として算出されるため、負債は端数を残さず処分金額とちょうど一致します。この最終計上は決済月の前月に行われ、決済月には利息費用が計上されないため、2か月分に相当し通常月のおよそ2倍の金額となります。

ARO相当資産とその減価償却

当初負債と同額が、CAPEX項目の種類に応じて**発電設備ARO(1522)または蓄電設備ARO(1510)**にARO相当資産として計上されます。

企業会計基準第18号の要求に従い、減価償却には対応するCAPEX支払い自体の減価償却タブで設定された減価償却方法および耐用年数が適用されます。対応する項目が定率法であればARO相当資産も定率法となり、定額法や級数法についても同様です。対応するCAPEX支払いで減価償却の適用がオフの場合は、除去日までの期間にわたる定額法が適用されます。

継承されるのは方法と耐用年数のみです。ARO相当資産は以下に説明する独自の開始月・終了月で償却されるため、対応する項目の減価償却開始日を上書きした場合、2つのスケジュールは一致しません。

最初の減価償却費は認識月に計上されます。最終の減価償却費は、次のいずれか早い方の月となります:

  • 認識月から起算した耐用年数の終了月の前月
  • 除去日の前月

減価償却費は発電設備ARO相当資産 - 減価償却(5022)または蓄電設備ARO相当資産 - 減価償却(5021)に計上され、累計額は2520または2510に計上されます。

決済

除去日の前日を含む月に、負債が貸借対照表から除去され、処分金額が現金として支出されます。これは財務諸表上でARO決済として表示されます。

caution

AROが有効で処分方法廃棄の場合、処分費用は計上されません。除去費用はすでにARO債務を通じて認識されているため、これを費用として再度計上すると二重計上になります。**発電設備処分費用(5307)および蓄電設備処分費用(5308)**は、AROが無効の場合にのみ使用されます。

処分損益は別途、除去日当月に認識されます。

note

このため決済と処分損益は異なる月に計上され、除去日が月初の場合は連続する2つの月になります。この境界が決算期末と重なる場合、現金決済と処分損益はそれぞれ異なる会計年度に計上されます。以下の計算例がこれに該当し、50,000,000円の支出は2052年3月、処分損益の認識は2052年4月となります。

タイミング一覧

イベントARO債務ARO相当資産利息費用ARO減価償却
CAPEX支払いなしなしなしなし
COD(認識)割引後金額の100%を当月計上割引後金額の100%を当月計上初回計上、当月初回計上、当月
耐用年数終了(除去日より前の場合)継続帳簿価額がゼロになる継続最終計上
除去日の前日を含む月除去され、現金で決済除去日が先に到来する場合は帳簿価額がゼロになる最終計上はその前月除去日が先に到来する場合は最終計上
除去日当月なしなしなしなし
計算例

耐用年数20年、CODが2022年4月1日、除去日が2052年4月1日、処分金額が50,000,000円、ARO割引率が3%の発電設備CAPEX支払いの場合:

  • NN = 360か月(2022年4月から2052年3月まで)
  • 当初負債 L0L_0 = 50,000,000円 / 1.033020,599,000円を2022年4月に認識。360か月を月次利率で割り引くことは30年を年利で割り引くことと同じであるため、指数は360ではなく30となります
  • 20,599,000円のARO相当資産を2022年4月に計上
  • 利息費用は2022年4月から2052年2月まで計上(359回、うち最終回は2か月分)
  • ARO減価償却は2022年4月から2042年3月まで計上(240か月)
  • 2052年3月に負債を除去し、50,000,000円を支出
  • 処分損益は2052年4月に認識

流動・固定の区分

負債は、決済までの残り期間に応じて流動と固定に区分されます:

  • 12か月超: 長期の資産除去債務(2700)
  • 12か月以内: 短期の資産除去債務(2324)

残高は一括で振り替えられ、按分されることはありません。

使用される勘定科目

コード名称用途
1510蓄電設備AROARO相当資産(蓄電池CAPEX)
1522発電設備AROARO相当資産(発電設備CAPEX)
2324短期の資産除去債務12か月以内に決済される債務
2510蓄電設備ARO - 減価償却累計額ARO減価償却累計額(蓄電池)
2520発電設備ARO - 減価償却累計額ARO減価償却累計額(発電設備)
2700長期の資産除去債務12か月超で決済される債務
5020資産除去債務利息費用割引の月次取り崩し
5021蓄電設備ARO相当資産 - 減価償却ARO相当資産の減価償却(蓄電池)
5022発電設備ARO相当資産 - 減価償却ARO相当資産の減価償却(発電設備)

勘定科目表の全体については、勘定科目を参照してください。

AROと除去積立金の違い

Tensor Cloudには、耐用年数終了時の費用に関連する機能が2つあります。両者は互いに独立しており、一方のみを使用することもできます。

ARO除去積立金
内容会計上の見積り現金の積立
現金の動き決済時のみ積立期間中に発生(タイミングは自社管理かどうかにより異なります)
設定場所CAPEX支払いの処分タブOPEX設定
勘定科目1510、1522、2324、2510、2520、2700、5020、5021、50222300、5218、1801

AROでは決済時まで現金の移動は発生せず、決済額は**プロジェクト現金(1000)**から支出されます。